1. 修理材料

 修理にあたっては 天然漆、小麦粉、上新粉、砥粉、地粉や金粉、銀粉などの材料を使います

食器類は修理後も安心してお使いいただけます

 

 漆は現在 国産および中国製が流通していますが国産漆は採取される絶対量が少なく漆需要の90%以上で中国漆が使われています

当 山笑堂では国産漆と成分が近く品質的にも安定し経済性にも優れている中国漆を主として使い必要に応じて 国産漆や他の材料も使います

 

仕上げ仕様を 錆漆、色漆、金属粉加飾、文様蒔絵加飾などお好みによりお選びいただけます

 

金継ぎ 山笑堂

陶磁器の修理に瞬間接着剤やアクリル/エポキシ系接着剤、合成樹脂パテ、カシュー塗料、代用金などの材料が使われることがあります

                                                                          

 合成系接着剤は成分の合成樹脂が完全に硬化していれば安全性は高いと言われていますが混合比の管理次第では未反応物質が溶出する可能性があります

食品衛生法上、メーカーは食器補修用の使用を認めていません (注1)

 

 またカシュー塗料(「新うるし」等)は漆と似た性質を持ち、かぶれずに使い勝手が良いので楽器や仏具、釣具などに広く使われていますが本漆とは異なる材質 ( カシューナットノキ属、本漆はウルシ属 ) です

 成分に有機溶剤を含み食品衛生法を準拠していないことからメーカーはお椀や箸などの食器類への使用を避けるように指導しています (注2) 

 

 

     注1) 一部製品には食品衛生法に適合するものもあります

     注2)     独自に検査試験を実施し食品衛生法上無害の判定基準を明示しているメーカーもあります

  当 山笑堂でも人形やイヤープレートなどの装飾品の修復には見目や経済性を優先して合成系接着剤、パテ や カシュー、アクリル 、エナメル、ウレタン塗料 などを使っています

金継ぎ 陶磁器修理 山笑堂

2. 漆について

漆ということばは、もともと使われていた「うるわし」「うるおう」ということばに漢字の「漆」を当てたもので「シツ」という音は漢音からきています

 

 ウルシ科の樹は中国、朝鮮半島、日本および東南アジアの各地域に自生しこの樹液を使った漆工品が各地域で作られています

成分はそれぞれの地域で異なり 日本や中国の漆液の主成分はウルシオールと呼ばれる天然樹脂で水分が分散したエマルジョン状となっています

 

 漆を使った矢や椀輪、竹籠、土器などが縄文時代の遺跡より数多く発掘されています  

飛鳥時代には法隆寺の玉虫厨子などの大陸の進んだ文化の影響を受けた漆工品が数多く作られていました

 

奈良時代になると唐風文化花盛りとなり以前に大人気となった興福寺の八部衆、三面六臂の阿修羅像などもこの時期に造られた脱活乾漆造と呼ばれる漆工法を使った乾漆仏です

蒔絵の源流と言われる「末金鏤 (まっきんる)」の技術もこの当時に唐より伝わりました

 

金継ぎ修理 山笑堂
国宝阿修羅展・乾闥婆 / 朝日新聞社

 江戸時代には鎖国下の長崎出島のオランダ東インド会社 ( V.O.C )を窓口としてヨーロッパ各国に多くの陶磁器、漆器が輸出されました

 

当時は陶磁器を「china」、漆器・漆工芸品を「japan」と呼びヨーロッパ王侯貴族の間で 貴重品として尊重されていました